革の種類
イールスキン(ウナギ革)
日本では食用としてポピュラーなウナギ。ヨーロッパではイールスキンと呼ばれ、人気があります。他の革と比べると強度はないものの、独特のツヤと、数枚をはぎ合わせることによる質感と手触りが個性的な素材です。
馬革
馬皮を原料とした皮革。衣料用をはじめ、ハンドバッグや靴の裏革などに使われます。馬は牛よりも運動量が格段に多いため、余分な脂肪が少なく皮も柔らかく薄く、軽いという特徴があります。なお、繊維密度の高い臀部(おしり)は、コードバンと呼ばれます。コードバンは希少価値が高く、頑丈で光沢があり美しいことから、ランドセルやベルト、財布などに利用されることも多い素材です。
オーストリッチ
鳥類最大のダチョウ。オーストリッチレザーとして用いられるのは、主にアフリカ産のもので、羽を抜いたあとが丸く突起しており、これが独特の美しい模様となって珍重されています。革質も丈夫で柔軟性に富み、ワニ革と並ぶ高級素材として幅広く利用されています。
カウハイド
生後2年以上の出産を経験した牝(メス)牛の革。ステア、ブルよりも薄手になります。厚さ、強度などにおいて、キップとステアハイドのほぼ中間ともいえる特徴をもつ。成牛であるため比較的大きな面の革が取れ、大型の鞄やジャケットなどに使用されることが多い。
ガルーシャ(エイ革)
ガルーシャ(Galuchat)は、宝石を散りばめたような輝きを放つエイ革を指します。斑の表面は象牙質とエナメル質で構成されているといい、加工には高度な技術が必要です。斑点状のウロコは「石」と呼ばれ、背面中央にある石の並んだ「連石」は珍重されています。スティングレイ(STINGRAY)・シャグリーン(Shagreen)とも呼ばれます。
皮・革(かわ)
混同されがちな皮と革ですが、実は全く別物。原皮を製品として使用できるようにする、鞣し(なめし)という工程を行う前のものを「皮」といい、鞣しを行ったものを「革」と言います。皮から革になることで腐敗せず強度を獲得し、「皮膚」であった「皮」が、道具として活用できる「革」へと生まれ変わります。
カンガルーレザー
原産国はオーストラリアのみ、というレアな革。オーストラリアの広大な大地を駆け巡る運動量を誇るがゆえに、その革はしなやかで強度も抜群です。スバイクなどのスポーツシューズやジャケットに使われる事が多いです。捕獲量の制限があるため、稀少度も高い素材です。
カーフ
カーフは生後6ヶ月以内の仔牛の革で、乳牛種の牡(オス)が大半を占めています。生後間もないため傷が少なく、表面が滑らかで繊維も緻密で柔らかいのが特徴。特に生後3ヶ月以内の仔牛の革は「ベビーカーフ」と言われ、カーフより厚みが薄く表面もキメ細やかであるため、高級な革製品用として使われています。
キップ
生後6ヶ月から2年までの中牛の革を指します。カーフ同様、仔牛のため表面の肌理が細かく、ケガ等に起因する傷も少ない特徴があります。滑らかさはカーフに劣るものの、革が厚く強度もあるため汎用性が高く、高級品用の素材の中では手ごろな材料とされ重宝されています。
コードバン
馬のお尻から採れる皮革で、革の中でも高級素材として扱われているのがコードバンです。馬のお尻の皮全てがコードバンとして使えるわけではなく、特に農耕馬のお尻の皮の内部に埋まっている「コードバン層」と呼ばれるコラーゲン繊維層を、丹念に「掘り起こす」作業が必要です。このため一頭の馬からごく限られた量しか採れず、非常に稀少性の高い革です。主に革靴や鞄、財布などに使用され、昨今ではカードケースといった小物用素材としても使われています。
ゴートレザー(山羊革)
繊維の密度が高く、柔らかな手触りが特長の山羊革。厳密にはおとなの山羊革をゴートスキン、仔山羊のものをキッドスキンと言います。ゴートスキンは牛革に比べて薄く軽いという特徴があります。さらに薄さの割に丈夫で傷がつきにくいため、取り扱いが容易で重宝されています(
当店のゴートレザーを使用したアイテムはこちら)
鹿革(ディアスキンレザー)
手触りがよく柔らかで、耐水性にも優れています。日本では古くから武具や衣類に使用されてきました。植物油で鞣したものを「セーム革」といいます。「セーム革」は水分を吸収しやすいのに硬くならず、伸びた際には元に戻る性質を活かして、自動車磨きやレンズにも使用されています。
シールスキン(アザラシ革)
4足動物は部位によって質感が大きく異なりますが、アザラシはどの部分を用いても比較的均一な品質を保つことが可能という特徴があります。ワシントン条約で保護されている事もあり、日本では滅多にお目にかかれない稀少な革です。
スエード
革の裏側である床面をサンドペーパーで毛羽立たせ、短く起毛させた仕上げ方法です。毛足が短く、細かくて柔らかな手触りのものほど良質とされています。中でも「シルキースエード」は高級品として珍重されます。ウエアや靴、ハンドバッグ、手袋など幅広い用途に使われます。
ステアハイド
生後3〜6ヶ月以内に去勢され、2年以上経った牡(おす)の成牛のこと。
象革(エレファントレザー)
迫力のあるシワ感と、高い強度が特徴のゾウ革です。以前は商取引や捕獲が禁止されていましたが、近年商業利用することが可能になり市場に出回るようになった、まだまだ稀少な素材です。
床革
表皮から1層目、2層目が削られている床面の革のことを指します。繊維が荒く薄いため耐久性に欠けるため、ポリウレタンなどの樹脂を表面に貼り耐久性を上げて使用される場合などもあります。
ヌバック
脱毛後の革の表面(銀面)をサンドペーパーで軽くバフ掛けして、起毛させた革のことをヌバックと言います。裏面(床面)を起毛させるスエードやベロアよりも繊細で、毛足が非常にきめ細かいのが特徴です。しっとりとした手触り感があり、婦人靴やハンドバッグ製品によく使用される素材です。(写真は
ALBEROのヴィオレッタシリーズで、ヌバックに軽くシボ出し加工を施したものです。)
ハラコ
胎児や生後間もない仔牛の革で、一般に毛の付いたままで製品に使われる革です。
羊革(シープ)
羊革のことを「シープ」、生後1年以内の仔羊を「ラム」と呼びます。毛穴によるキメが細かく、薄くて柔らかいのが特徴です。繊維が粗いため、強度が必要な革製品にはほとんど利用されません。ラムの手触りは素晴らしく、高級な手袋や帽子、また毛付きのものは「ムートン」としてコートなどに使われています。
豚革
日本国内で一貫して生産できる唯一の皮革で、日本製の豚革は海外にも輸出されています。スエード状に仕上げたピッグスキン・スエードは特に人気が高く、カジュアルシューズなどにも使われています。豚革の特徴として、革の表面に3つずつ並んだ毛穴は全層を貫通し、優れた通気性をもたらすため、靴の中敷に利用されることも多い素材です。
ブライドルレザー
もともとは乗馬の際必要な馬具のために作られた革のこと。牛革を原料とし、牛脂や蜜蝋、魚油、植物油と共に、強度を高めるためにロウを塗り込み、繊維を引き締めて作られます。このため、表面には油分やロウが染み出し「ブルーム」と呼ばれる白い粉が現れます。お手入れの際には、ブライドルレザー専用の革クリームを使用することで、美しい風合いを保つことが出来ます。(写真は
CORBO. ブライドルレザーシリーズの財布です。)
ブル
生後3年以上のオスの成牛の革。厚く繊維組織に粗さが目立つ革です。
ヘビ革
全身に美しい斑紋(はんもん)のあるパイソン(ニシキヘビ)が、主にヘビ革として使用されます。中でも菱形の模様をもったダイヤモンドパイソンは人気が高く、ヘビ革の代表格とされています。海ヘビやコブラなどのスネーク類もウロコ模様の違いに応じて活用されます。ヘビ革は、主にバッグ、小物、ジャケット、ブーツ等、ファッション性の高い製品によく使われます。
ベリー
柔らかくて軽量なため加工しやすい反面、伸びやすいという難点を持つ腹部分。その特性を活かして、バッグの内張りや靴の中敷等に使われることが多い。腹の真下にあたる縁の部分は柔らかすぎるため、製品への使用には向かない。
ベロア
革の裏側である床面をサンドペーパーで毛羽立たせた革で、同じ起毛革であるスエードよりも毛足が長くラフな仕上がり。成牛など繊維が粗い大型動物のものが多い。(スエードは子牛や山羊、豚革など革質が繊細なものが使われます)靴、ウエア、ハンドバッグ、手袋など広い用途に使われます。
ラム革(ラムレザー)
子羊の総称。カラクールがヒツジの毛皮用種では代表的ですが、他の毛皮用種が毛皮として利用される場合も多いです。
ラムスキン
生後1年未満の羊革で、キメ細かくて毛穴が小さいのが特徴です。羊革のなかでは最高級とされ、軽くて柔らかい素材のため、ジャケットなどの衣類の素材としても最適とされています。
リザード
爬虫類の中でもポピュラーな素材である、小さく規則的に並んだ斑(ふ)によって上品な印象を醸し出す「リザード」。約3,000種生息するトカゲの革を総称して、リザードと呼びます。エキゾチックレザーの中では最も発色が良く、適度に強度もあり実用性が高い革です。現在流通しているものは、リングマークリザードとテジューであり、トカゲの中で最も大きく革質も丈夫なリングマークリザードは、ウロコにリングの模様があり、高級品とされています。
ワニ革
背の部分をカットし、腹部の「腹鱗板」と呼ばれる独特のウロコ模様を活かした「肚(はら)ワニ」と、背にある大きなウロコ模様を活かした「背ワニ」があります。豊かな革の表情に定評があり、時計用バンド、財布、ベルトといった小物類や、特に高級なバッグに多く使用されています。ウロコ模様が整っており美しいため、ワニ革の中では
クロコダイルが最もよく使用されています。
革鞣し(なめし)用語
油鞣し
魚油で革をなめす(鞣す)方法。軟らかい皮革に用いられることの多い製法で、銀面と肉面の両方を仕上げることができます。製革行程で用いると、色に濃淡を出すこともできます。耐洗たく性があるものの、機械的強度が弱く、熱収縮温度が低くなる点が特徴。セーム革のなめしが代表的な例である。内容は異なるが、古典的な油なめし法としては、植物油(主に菜種油)を用いる姫路白なめしがある。
ウェットブルー(青革)
クロムなめしを行った後の染色をしていない状態の皮革のことで、青革(あおかわ)と言われることもあります。
また、和服を着るときに履く、クロムなめしの後で板張りして乾燥させた、ぞうりの底に用いる皮革のことを青革と呼ぶこともある。
クロム鞣し
1884年に実用化された比較的新しい鞣し方で、化学薬品(塩基性硫酸クロムなどの三価クロム)を使って鞣す方法。安価で効果的な鞣剤であり、様々な用途に適用できる鞣し方法。柔軟性、弾力性、耐熱性、染色性などに優れています。皮をタイコと呼ばれるドラムに入れて回転させ、薬品を浸透させます。鞣した後はウェットブルーとよばれる青色の下地になります。
革の完成まで数週間程度で済むため、クロム鞣しの革はタンニン鞣し革より価格が安い傾向があります。現在は、世界中で製造される革の約80%がクロム鞣しと推定されています。
混合鞣し
初めにクロムで鞣してから、次にタンニンで鞣すいわば「良いとこ取り」の鞣し方。これにより、適度にエイジングを楽しめ、同時に水に強く耐久性に優れ、軽量な革が出来ます。クロム鞣しのような独特の粘り気のある質感が味わえるものもあります。(写真は
CORBO. ファミリアシリーズのバッグより。まさにクロム鞣しの長所であるしなやかさや粘り、軽さを残しながら、タンニン鞣し革の機能的長所・感触や風合い・あたたかさを兼ね備えた逸品です)
背割り
洗い終えた原皮を半分にカットし、その後の作業をしやすい状態にすること。
タイコ
原皮の水洗いや石灰漬け・脱毛処理といった複数の工程で使用される、大きな樽のような形状の容器が回転する機械装置のこと。金属製や木製のものが存在し、複数の工程でそれぞれ専用のタイコが用意されます。タイコの内側には10cm程度の突起物があり、この突起物に皮が引っかかった状態でタイコが回転することによって、薬剤をかき混ぜて皮に浸透させていきます。
タンナー
皮を革にする鞣し加工(tanning)の仕事を行う、人や業者のことをタンナーと言います。皮革製造業者と呼ばれることもあります。
タンニン
植物の樹皮から抽出される渋成分で、皮革のタンニン鞣しに用いられます。
タンニン鞣し
ミモザやチェスナットといった植物の樹皮から抽出したタンニン(渋)を用いて、古代エジプト時代から行われているとされる伝統的な革の鞣し方。ピット槽につける方法と、タイコと呼ばれるドラム型の機械装置を使って比較的手早く作る方法があります。革の完成まで数ヶ月を要するため、クロム鞣しの革よりも高価な傾向があります。
鞣し
そのままでは腐敗したり、水分が抜け硬くなってしまう「皮」のコラーゲン繊維になめし剤を結合させ、安定した素材である「革」に変化させることを言います。これにより革は劣化を抑えながら、素材としてのしなやかさ・柔らかさ・強度を獲得します。
現在このなめし剤は、植物由来成分である「タンニン」と、塩基性硫酸「クロム」が主流です。古くは燻したり、塩や油を使った方法もありました。(一部ではこれらの伝統的な技法が再評価されて、復活している場合もあります)。
ピット槽
長い時間をかけて皮の繊維構造とタンニンを結合させ、「皮」を「革」に変化させるための槽。ピット槽は複数濃度・成分を予め用意し、皮に刺激を与えないよう少しずつ漬け込む濃度を濃くして行く。
ピット鞣し
タンニン剤が入ったピットという槽(おけ)に皮を漬け込んで鞣す方法で、タンニンの濃度や成分が違った槽をいくつも準備し、 タンナー がその槽へと皮を漬け込む作業を行います。ピット層鞣しの場合はタンニンが自然に染み込んでいくのを待つ必要があるため、タイコという機械装置を用いて鞣すよりも、どうしても時間がかかります。
フレッシング
皮の裏面に付いている付着物(脂肪等)を除去すること。裏打ち。皮の裏面に残った付着物は、鞣し用薬品の浸透を妨げるためフレッシングを行います。薬剤の節約や、革の品質向上に役立ちます。フレッシングマシンもしくは、せん(銓)刀を用いて行われます。
皮革
皮・革(かわ)の項も参照。動物の皮膚を生のまま、または鞣し加工を施したもの。動物からはいだ皮膚を皮と言い、皮から毛などを除去し鞣して得られる製品を「革」と言い、生皮から革までを含めて「皮革」と総称します。なお、毛皮は毛を除去せずに鞣したもので、広義には皮革に含まれます。
革の加工方法
アイロン仕上げ
革を鉄板で熱プレスする仕上げ方法で、プレート仕上げとも呼ばれています。革を加熱・加圧すると銀面(革の表面)が平坦になり、艶出し効果を得ることが出来ます。なお、仕上げ剤によっては艶消し効果を得られる場合もあります。
アニリン染め
「アニリン仕上げ」とも言われ、天然植物から抽出した染色剤を使って、革の仕上げを行う方法のひとつです。「顔料」を使わずに「アニリン」という水溶性の合成染料だけで、皮革の染色と保護処理を行います。
アニリン染めは透明感のある塗膜なので、革本来の特徴を最大限に活かし表面の筋や毛穴などの模様や色の濃淡がきれいに浮き出してきます。
革の表面がそのまま活かされるため、傷などのない高品質な生地に使用されます。同時に、水溶性なので染料が革に浸透し、革の呼吸を妨げないため染色後も柔らかく、しっとりとなめらかな質感が得られるという特徴があります。
デメリットとして、表面の塗膜が薄いためシミになりやすく、色褪せしやすいという点があります。「染料」だけを使用したものを「ピュアアニリン」、染料に少量の「顔料」を混ぜたものを「セミアニリン」と言います。
エナメル加工(エナメルレザー)
エナメル加工を施した革は、パテントレザーとも言われます。革の銀面へボイルアマニ油やワニスを塗装して乾燥を繰り返すことで、光沢のある被膜を出したものです。現在はウレタン樹脂が使われることもあります。素肌の魅力を打ち出す本染め革とは対照的なエレガントな仕上げで、水にも比較的強いのが特徴です。(写真は
Dakota グロッソシリーズのアイテムです)
オイル仕上げ(オイルレザー)
ロウやオイルなどを加え、撥水性や堅牢性を与えて、強化レザーを作る仕上げ方法。オイル仕上げはそのうちの一つで、革に多量のオイルを加えることで、耐水性と柔軟性を持たせたもの。染み込ませたオイルによって独特の艶があり、また使い込むほどにオイルが染み出て独特の風合いを見せる。
角シボ
革を手や機械を使って揉み、シボ感(シワ)を出した革を揉み革と言います。さらに上下や左右など二方向に揉んで、チェック柄のようにシボを出したものを「角シボ革」「角揉み革」と言います。
型押し
革の銀面に高温高圧のプレスで凹凸を付けて、革に立体的な表情を与える仕上げ方法。クロコ型押しのようなエキゾチックレザーの模様や、シボ模様を付ける用途等に用いられます。型押し技術が上がった近年では、天然のものと見分けがつかないほど精巧なものも多く、鞄や靴、ウェアなど幅広く活用されています。
空打ち
乾燥工程以降に行われ、革の繊維をほぐして柔軟にする作業です。水を入れないドラムに革を入れて回転させます。革を柔軟にする効果があり、シボ出し効果も得られます。
ガラス張り
クロムなめしをした革をガラスやホーロー板に貼付けて乾燥させ、銀面をサンドペーパーで削り樹脂を吹き付けて表面を円滑にしたもの。銀面が均一なので歩留まりがよく丈夫で手入れが容易なことから、紳士靴や鞄、ベルトなどに使用されています。
顔料染め
色の付いた細かな粒子状の物体を樹脂(接着剤)の力を借りて、繊維の表面に接着することで染める革の染色方法。繊維に染み込んで染色を行う「染料」のような色抜け・色落ちはしにくい傾向があります。
しかし、あくまで繊維に接着剤を用いて色の粒子を接着している状態のため、何らかの作用で顔料が剥がれてしまうようなことがあれば、美観や品質が劣化する可能性もある染色方法です。生体としての原皮の傷やシワを隠してしまえるため、原皮の状態に左右されにくいメリットもあります。
銀擦り
革の仕上げ塗装を行う前の作業で、バフィングペーパーを使用し、銀面の汚れや傷などの部分を薄くバフィングして除去することを言います。この吟擦り(吟スリ)後、顔料ペーストや少量のワックスエマルションなどを組み合わせて樹脂仕上げを施すことにより、革の強度・品質を低下させることなく外観を改善させることができます。ガラス張り乾燥を行った革や、ヌバックの製造に適用することが多い。
シュリンク(シュリンクレザー)
鞣し行程中に熱や薬品を用いて革の銀面を収縮(シュリンク)させ、シボを出したもの。革の縮み具合は皮革の種類や薬品によっても違いがありますが、シボによって傷が目立ちにくくなり、柔らかく仕上がります。混同されがちな「揉み革」は、手や機械を使って自然なシボ加工を施したもので、シュリンクよりもシボ立ちが穏やかな傾向があります。
素上げ革
革本来の外観を残したまま仕上げる革のことを言います。製革工程の中で塗料やオイルを使用した加工を施さずに仕上げる、いわば「すっぴん」に近い革と言えます。染料のみで仕上げた革も広く素上げ革と呼ばれます。
スムースレザー
表面がスムース調の革で型押しがされておらず、スウェードやヌバックのように起毛していないものを指します。そうした表面が滑らかな革の総称のため、革の種類は牛革、豚革、羊革などを問いません。スムースレザーの加工の仕方には、表面をそのまま活かす「銀付き革」と、バフと呼ばれるやすり掛けをした後、顔料による塗装仕上げをした「ガラスレザー」があります。
染料染め
染料で革の繊維を染め上げる着色方法。革本来の表情であるシワ・トラ・傷・血筋などを活かした染色が可能です。革本来の自然な風合い、手触りを楽しめ、革の経年変化を楽しめるのも特徴。反面、耐水性が低い、色ムラ(染めムラ)が出やすい、良くも悪くも生き物本来の傷が出やすく、原皮の状態に品質を左右されやすいという特徴もあります。
ヌメ革
タンニンなめしの革を無染色で仕上げたもので、薄茶色からベージュの色が特徴的です。厚みがありなめらかな手触りは、革本来の風合いが活かされているとされ、人気があります。広義には染色してある素仕上げのものもヌメ革に含みます。染色時には厚みをそろえて染色加工をします。
バタ振り
専用の機械で革の端を摘み上下に振ることで、自然なシボ感や柔らかさを得るための工程。
バフがけ(バフィング)
脱毛後の革の表面(銀面)をサンドペーパーで擦って除去し、起毛させること。革の銀面(革の表面)にバフがけを施してヌバックに仕立てるケースや、革の床面(裏面)にバフがけを施して、細かい毛羽を立たせスエードやベロアなどに仕立てるケースもあります。
揉み革(もみ革)
革の銀面に手や機械を使って揉み加工を施し、シボ(革に出るシワ)を出した革。揉む方向によって名前が付いており、1方向なら「水シボ革」、2方向なら「角シボ革」「角揉み革」、四方八方さまざまな方向から揉んだものを「八方揉み革」と呼びます。混同されがちな「シュリンクレザー」は薬品を使って収縮させてシボを出す方法で、揉み革よりもシボ感が強くなる傾向があります。
革の表情・性質
アタリ
頻繁に擦れて現れてくる跡のこと。金具の凹凸、カードや小銭等の内容物、革の重なり等によって革が内側から押され、押されている部分が他の部分より強く頻繁に擦れることで現れます。
色落ち・色移り
染料や顔料を使って染色された革の色が、水濡れや摩擦によって落ちたり、服に移染したりすることを「色落ち」「色移り」といいます。
エイジング(経年変化)
植物鞣し(タンニン鞣し)をされた革に含まれるタンニンは、空気中の酸素に触れたり紫外線に当たることで、酸化して色が変化していきます。また、革製品を使ううちに手の油分が革に吸収されたり、紫外線に当たる事によって、革の繊維に浸透している油分が徐々に革の表面に出てきてコーティングされることで、艶が上がっていきます。これらの変化を総称してエイジング(経年変化)と言います。
銀浮き
革の銀面が浮いた状態になり、凸凹が出来てしまった状態です。水に濡れた時、通気性が損なわれていると革の間に水分が留まってしまい、そのまま乾く事で革の表面が凸凹してしまう場合があります。
銀面(吟面)
鞣した(なめした)革のうち、表皮にあたる部分。厳密には動物の皮の一番外側にある薄い表皮を除去した「真皮」の表面のことで、英語では「Grain(グレイン)」と呼ばれます。銀面は動物の種類、鞣し方、仕上げの方法により様々な表情を見せます。
シボ
皮革製品の表面に、ちりめん状に細かく寄った不規則なシワ模様のことを指し、漢字では「皺(しぼ)」と書きます。
トラ
首の周り、肩、背中、お腹など、シワが寄りやすい部位に入る筋状の縞模様のこと。他と比べて強度面が劣るといった欠点はなく、よほど見栄えの悪いものでない限りは、資源の有効利用の観点からも、製品に「トラ」を取り入れる皮革製造業者は多い。
一般的には塗装や型押しなどの表面加工によって消されて市場に出回る事も多いですが、本物志向の革好きの間では「トラ」が好まれる事もしばしばあります。
バラ傷
生きていた時に柵で擦れたり、喧嘩したりして出来た小傷のことを指します。個体によって大きさ・深さ・長さ等は千差万別です。天然の革以外には見られないことから、まさに本物の革の証と言えます。
プルアップ(プルアップ効果)
革を折り曲げたり、引っ張ったり、裏から指を押し当てた際などに、オイルが繊維の中を移動し、表面の色が変わること。
ブルーム
革の内部に染み込ませた牛脂などのオイル分・ロウ分が浮き出たもので、白い粉上になって表面に現れるもの。果物や野菜の果実を保護する、果皮表面の白い粉のように見える蝋状の物質と同様に、皮革製品を保護する役目があります。(革製品においては保管中の乾燥を防ぎ、防湿効果があります)
焼ける(やける)
革の中に含まれるタンニン(シブ成分)や油脂が紫外線によって酸化されて、革の色が濃くなること。使い始めのヌメ革の日光浴などは、この変化を期待して行われます。
革の豆知識
日光浴
タンニン鞣し革のエイジングを促進する事を意図し、白ヌメ革等のヌメ革製品を、日光に当てること。使い始めのヌメ革は特に汚れが目立ちやすいため、少し日光浴をさせることで革の色を濃くし、汚れを目立ちにくくする効果を得られます。(写真のバッグは
ALBERO トートバッグ 2030です)
バケッタ製法
長い時間をかけて、皮に植物性タンニンを染み込ませて鞣す、イタリアの伝統的な製法です。 膨大な時間と手間がかかるためイタリアでは衰退していたのを、バダラッシー社が復活させました。
バダラッシー・カルロ社
バダラッシー・カルロ社(Badalassi Carlo)は、昔ながらのバケッタ製法で革を製造する数少ないタンナーの1つ。世界中でも愛好家が多い「ミネルバ・ボックス」「ミネルバ・リスシオ」といった高品質の革を製造しています。革作りを教える学校で教授をしていたカルロ氏が興した、比較的新しい部類に入るタンナー。
プエブロ
和紙のような手触りと劇的なエイジングが魅力的な、イタリアの名門タンナー「バダラッシー・カルロ」社の牛革の名称。同社が現代に蘇らせた、イタリア古来の伝統的な革鞣し技法であるバケッタ製法を用いて作られた革を、仕上げ加工として表面を荒々しく毛羽立たせた皮革です。最初の状態はマットで光沢感も殆どありませんが、使う程に表面の繊維が寝て、美しい光沢が上がっていきます。(写真は
BAGGY PORT ブオナシリーズ。左が使用前、右が使用1ヶ月後のイメージです)
ブッテーロ
イタリアのトスカーナ州・フィレンツェにある老舗タンナー「ワルピエ社」が手がける有名なレザー。ステアという成牛のショルダー(肩)部分を使って、伝統的な技法で100%植物タンニン鞣しで作られた最高級の皮革です。一頭の牛から肩の部分の革というのは多くは取れないので、貴重な革とされています。イタリアならではの染色技術で着色されており、非常に綺麗な発色も特徴です。
防水スプレー
防水スプレーにはシリコン系・フッ素系のスプレーが存在しますが、革バッグや革靴といった皮革製品に使用する防水スプレーは、フッ素系防水スプレーが好ましいです。フッ素系の防水スプレーは、水の分子よりもさらに微細なフッ素樹脂を、革の繊維に付着・浸透させて防水効果を得るため、革の通気性や柔軟性を損ないません。(表面に皮膜を作るシリコン系のスプレーは、レインウェア、傘、雨靴に使用するのが好ましいです)
ミネルバ・リスシオ
イタリアのフィレンツェ州にある、トスカーナ地方の老舗タンナー「バダラッシ・カルロ社」による植物タンニン鞣し革。リスシオはイタリア語で滑らかの意。昔ながらの製法で手間暇かけて鞣されており、透明感があり美しい色合いや、滑らかな手触り、経年変化のスピードの早さに定評があります。革好きの間でも非常に人気が高いレザーです。
ミネルバ・ボックス
「バダラッシ・カルロ社」による植物タンニン鞣し革。ミネルバ・リスシオに揉み加工を施しており、豊かなシボ感と柔らかく吸い付くような手触り、軽く握るとギュッと鳴く音が特徴的。ミネルバ・リスシオ同様に経年変化のスピードが早く、革好きの間で非常に人気の高い革です。(写真は
BAGGY'S ANNEX ミネルバ・ボックスシリーズの長財布です)
六価クロム・三価クロム
単体のクロムは安定した錆びにくい無害の金属で、鉄との合金がステンレスとして広く利用されています。クロムの化合物を価数で分類したとき、Cr(III) 化合物と Cr(VI) 化合物がそれぞれ一般に「三価クロム」「六価クロム」と呼ばれます。六価クロムは非常に強い酸化能力を持つ不安定な物質で、有機物と接触するとその有機物を酸化して、自身は三価クロムに変わる性質があります。六価クロムの強い毒性はこの性質に由来しており、自然界に通常は存在しないのもこのためとされています。
バッグ・財布用語
カシメ
カシメは補強やデザインのアクセントを目的として、持ち手やポケット等に使われる金具です。力のかかる部分や、厚すぎてミシンでは縫いにくい部分の接合・補強などに使用されます。
サイズの大小、色、素材、両面カシメ・片面カシメといった形状の違い、さらにメーカー等が特注したオリジナルデザインのものまで、様々なバリエーションがあります。(写真は
BAGGY PORT ロウビキパラフィンシリーズのバッグ。左右のカシメがデザインのアクセントとして効果的に使われています)
菊寄せ
ヘリ返しタイプの革製品の角部分に、放射状にヒダを寄せていく技術。仕上がりが菊の紋様のようになるため、菊寄せと言われるようになりました。別名「刻み」とも言われます。(写真は
CORBO. ボトムホースシリーズの名刺入れです)
コバ・コバ磨き
革の切れ目・断面のこと。コバをやすり・専用液・ウッドスリッカー等で整えることをコバ磨きと言います。コバの処理の美しさは、製品の美観にも大きく影響します。
漉き(すき)
厚みを均等にしたり、注文に応じた厚さに漉いていく工程です。漉きだけの専門の業者が存在するほど、技術や機械は特殊です。
デシ(1DS)
革の面積を表す単位で、1デシ(ds)が10cm×10cmの正方形の面積と同等です。2デシは10cm×20cmの面積と同等です。
箔押し
熱と圧力によって、金・銀・色箔の文字や絵柄を入れる印刷加工技術のことで、別名ホットスタンプとも言います。箔押しを用いれば、皮革製品のブランドロゴ等にメタリックな光沢感を表現し、高級感を持たせることが可能です。
ハトメ
ハトメはひもなどを通す穴の補強やアクセントに使う金具です。色々な色、サイズのものがあります。
袋縫い
バッグの仕立てに使われる事が多い縫製方法。全体を裏返しの状態でまとめておき、仕上げの段階で、袋の口に該当する部分から、全体を引っ張り出して裏表をひっくり返す方法です。
まち・マチ
マチはバッグや財布の厚み、奥行きの部分のことです。マチが大きいほど収納力は高くなります。バッグには通しマチ、横マチ、底マチといった種類があります。財布には笹マチ(ささまち)、通しマチ、風琴マチ(ふうきんまち)、函マチ(はこまち)などの種類があります。
焼印
高温に熱した金具を用いて、動物の革、木製品、食品などに印を付けること。革製品においては、箔押しとともにブランドロゴや、ブランドのメッセージ等を商品に付与する際に用いられるケースが多いです。