雨の日だって革バッグを持ちたい。そんなときにオススメしたいのが防水スプレーを用いた「防水ケア」です。
防水スプレーの特徴を知って、使い方のコツを押さえておくだけなので、難しくはありません。この機会にぜひ「防水ケア」をマスターして、雨の日が続いても快適に乗り切って行きましょう。
まずは、防水スプレーがどの程度効果があるか確認しておきましょう。
写真は、ごくごく一般的なタンニン鞣しのヌメ革を使って、革の片面だけに防水スプレーを使用した場合です。
使用したのは、当店でも取り扱いのあるコロンブス社のウォータープルーフスプレー(アメダス)です。防水スプレーを噴霧しなかった左の面は、水が染み込んで、全体的に色が濃くなっているのが分かります。
そして対照的に、防水スプレーを使用した右の面は、水をころころっとした玉状に弾いており、高い防水効果(正確には撥水効果)が得られているのが分かります。
革用の防水スプレーには2種類あり、「シリコン系」と「フッ素系」に分けられます。
革の表面に皮膜のバリアを作って、水を侵入させないようにするタイプが、シリコン系防水スプレーです。
効果がすぐに得られますが、皮膜が革本来の通気性を悪くさせてしまいます。(表面に皮膜を作るシリコン系のスプレーは、まさに膜で覆ってしまうイメージ。レインウェア、傘、雨靴に使用すると効果的ですが、革製品との相性はあまり良くありません。)
水の分子よりもさらに微細なフッ素樹脂を、革の繊維に付着・浸透させ、防水効果を得ることができます。
革の通気性を損なわず柔軟性をキープしてくれるので、スプレーによる革の劣化が起きにくいです。
また、フッ素系の防水スプレーは、スムースレザー(表面がすべすべとしている革)や、スエード・ヌバック素材にも使えます。
デメリットとしては、あくまでフッ素樹脂が革の繊維に乗っているような状態になるため、効果があまり長く続かない点です。このため、革製品にはフッ素系スプレーを使用し、雨の日には毎回(もしくは週2~3回)スプレーを噴霧する必要があります。
革と相性が良いフッ素系のスプレーとしては、当店でもお取り扱いのあるコロンブス社の下記2種類の防水スプレーがおすすめです。
フッ素系撥水・撥油剤をコーティングすることにより、皮革アイテムの通気性と柔軟性を損なうことなく、高い防水(撥水)効果を得ることができます。
また、「ウォータープルーフスプレー(アメダス)」「デリケートレザープロテクター」は乾燥時間が15分と短めなため、お出かけ前でも気軽に使いやすいのもポイントです。
バッグのホコリや汚れを落とした後、スプレーの容器をよく振り、20~25cm程度離して表面が軽く濡れる程度にスプレーを噴霧して下さい。(使用したい革バッグや財布と、並行に腕を動かすイメージです)
スプレー直後に皮革の色が濃くなる場合がございますが、乾くと(約5~10分程度)元の色に戻ります。ヌメ革、起毛革等、浸透性のよい素材では、約15分以上の乾燥が必要な場合があります。
ご使用の革製品の革の種類が分からずご不安な場合などは、目立たないところで軽くテストしてから使用するようにしてください。
また、スプレーは必ず屋外の風通しの良い状態で行い、スプレーを吸い込むことが無いようにしてください。
上述の通り、防水スプレーが十分に効果を発揮するためには、噴霧した後、しばらく時間を置くことが大切です。
これは、防水スプレーから吹き付けられて寝ているフッ素が立って、定着するまでにそれくらいの時間がかかると言われています。雨の日にお出かけする際は、外出の15分前までにスプレーをしておくと安心です。
防水スプレーを噴霧する頻度は、雨の日の外出1回につき、スプレーも1回、が基本です。
梅雨など雨が続き、毎日スプレーをするのが面倒な場合は、週2~3回でもある程度の効果は期待できます。
防水ケアをするということは、言い換えれば革にバリアをして変化を起こさせにくくする、という事でもあります。
もしも革のエイジングを存分に楽しみたいのであれば、防水スプレーは雨の日だけに抑えるようにします。
反対に、革製品をとにかくキレイに使いたいという場合は、雨が降っていなくとも週に2~3回程度、定期的に防水スプレーをするようにすると良いでしょう。
2度スプレーを噴霧したほうが、水をよりきれいに玉上に弾く場合もあります。(使用する環境の違い、革の種類などによって差はあります)
2回目は、1回目を噴霧してから15分~30分後に行うようにしてください。
また、さらに3回目4回目…と繰り返したり、1度にスプレーを大量かつ長時間かけても、効果は上がらないため注意してください。
本来の防水スプレーの用途とは違いますが、防水スプレーを噴霧してから革クリームを塗ることで、クリームを少量でも塗り伸ばしやすくする事が可能です。
また、クリームが必要以上に革に深く染み込んで行くことを防ぎ、色ムラを起こしにくくする事もできます。
防水スプレーには、撥水効果(水を弾く)以外にも、革をホコリや汚れから守る効果もあります。
革製品を長くキレイに使いたい場合は、雨が降っていない場合でも、週に1回程度は防水スプレーをかけておくと良いでしょう。スプレー前には毎回ブラッシングして、余分なホコリや汚れを落とすようにしてみてください。
気をつけていても、愛用の革製品が濡れてしまうことはあります。万が一濡れてしまった時のために、下記のことを覚えておいてください。
雨に濡れた革製品をドライヤーなどで急速に乾かそうとすると、革の中のオイル分が抜けて、ヒビ割れを招く危険があります。 また、熱によって革の繊維の収縮が起き、型崩れを引き起こす危険もあります。
一度熱によってヒビ割れ・収縮が起きると、元に戻すことはほぼ不可能になるため、注意が必要です。
万が一愛用の革バッグや財布が水に濡れてしまった場合は、焦らずに。まずは柔らかい布で水気を優しく拭き取ります。強くこすって、表面を傷めないようにしてください。その後、風通しの良い場所で陰干しします。ゆっくりと乾かすようにしてください。
風通しの良い場所で乾かす、というのも非常に大事なポイントです。
湿気が多くジメジメした場所に革製品を放置すると、そのまま一気にカビが生えてしまう場合があります。そうなるとカビを完全に除去するのは難しいため、気を付けてください。
革にはある程度オイル分がないと、ひび割れを起こしてしまう危険性があります。濡れた革が乾いたら、防水ケアの仕上げに、一緒に抜けてしまった油分の補給もしてあげるとベターです。
家庭にあるワセリンなどで代用するのではなく、革専用のクリームを使用することを強くおすすめします。
合皮やナイロンなら、ある程度水への耐性もあり手がかかりません。それでも、本革ならではの質感の良さや、年月を経て風合いを増す表情は、やはり他に代えがたいものあります。
防水ケアをマスターして、革製品と共に毎日をより楽しく快適に過ごせますように。